家族の絆が集約~チョサスカラスカル
チョサスカラスカルはバレンシアのワイン産地ウティエルレケーナにあるオーガニックに力をいれているワイナリー。
実は「ビノ・デ・パゴ」というスペインでも20軒ほどしかない単一畑限定高級ワインのカテゴリーに認められているのだが、訪問してみるとそこは「大草原の小さな家」という雰囲気で敷地が自然公園の一部というだけあり草原や森に囲まれ、醸造施設を囲むように畑があり、施設内も畑も手入れが行き届いている。
ちょうど木々の間にウサギがぴょんぴょん跳ねているのを見かけた。
バレンシア駅に迎えにきてくれた長女マリアはしっかり者のパワフルな女性で、まだ生後数か月の子供を育てながら精力的にセールスを担当している。
彼女の叔父もセールスで、弟のフリアンは醸造を担当している。1990年に父フリアン(スペインでは子供に同じ名前をつけるのは珍しくない)がプロジェクトとしてワイナリーを設立、もともとは大手企業の財務部長をしていたというから一大決心だ。
そして母はバレンシア大学薬学部博士課程卒、大学で教鞭をとっていたが現在はぶどうの成分(ポリフェノールの一種)を抽出したアンチエイジングの化粧品ビジネスに忙しく、市内にショップをオープンするそう。
彼らのワインの醸造にはその母の研究内容を活用した面もあり、家族総出でワイン造りに携わっている。
長女のマリアは、ある日「家のワインを売ってくるから預けてほしい」と勇ましく父親に持ちかけたそうで、そこから国内実績が伸びたという頼もしい長女。
その当時の話を今も嬉しそうに語る父と学生の頃からの仲という知的な母に頼もしい子供たち。
訪問した夜は、市内のレストランにオーナー夫妻が連れて行ってくれた。
その車中で「実はバレンシアに昔住んでいたことがあって懐かしい」と言うとレストランまで遠回りして市内を見せてくれたその計らいに感激。
素晴らしい立地のワイナリーと手入れの行き届いた畑や可愛らしい邸宅兼ゲストハウス、収穫手伝いに来たら今度泊めてほしいと半分本気で言ってみると「いつでも来ていいよ、ここはあなたの家だから」との優しい言葉にさらに感激。
実権は2代目の子供たちに移しており、快活によく話す姉のマリアとは対照的におとなしい印象の弟フリアンと二人がワイナリーの看板を背負って頑張っている。
弟フリアンは3年前にハネムーンで初めて日本に来た際に寿司屋に連れて行ったことがある。
いわゆる伝統的な江戸前寿司で、赤酢のシャリと特にコハダなど光物と、彼らのロゼの相性が抜群で改めてロゼワインの幅広さに驚いた。
観光客には絶対来られない、素敵な場所に連れてきてくれて有難う。」と新婚夫婦が終始可愛らしい笑顔で喜んでくれたのが印象深い。
二人も学生の頃からの仲だそうで、きっと仲の良い両親のような素敵な夫婦になるのだろう。
その半年後に現地の展示会で姉マリアに会ったのだが、弟からの日本の土産話を聞いて心底羨ましい、自分も日本に行ってみたいと悔しがっていた(笑)。
日本に興味を持ったのか、今年の5月のドイツの展示会ではラーメンを慣れないお箸で食べている写真が送られてきてなんとも微笑ましい一家だ。
いつか大草原の素敵な家に収穫を手伝いに行こうとひそかに考えている。
この生産者について詳しく知る
オーガニック&エコロジーに特化した「ビノ・デ・パゴ」
ワイナリーの設立は1990年、バレンシアの州都から70km離れたレケーナのサン・アントニオ村に位置する家族経営のワイナリー。樹齢100年の古木のボバルをはじめとする赤8種類、白3種類の合計11品種という多品種栽培を手掛け、シラーやソーヴィニヨンブランは初めてDOに認定されるというこの地のパイオニア的存在です。またトラクターや機械からのCO2排出量削減にも気を使い、設備で使用する電気の6割はソーラーパネルで自家発電、将来的には9割をめざすなど、環境対策にも熱心に取り組んでいます。