ラ・マンチャの男「セニョリオ・デル・フーカル」
若旦那、という表現がぴったりかもしれない。
ラ・マンチャ地方にあるワイナリー「セニョリオ・デル・フーカル」のオーナー・ペドロは家族経営のワイナリーグループの3代目。グループを大きくしたのは父親で、現在所有の4ワイナリーの実権をそれぞれ息子たちに任せた。
次男のペドロは父親の敷地内にある小さなブティックワイナリーを任されている。若いが仕事に、ワインに、常に真摯に向き合う態度は頼もしく、自然農法でピュアな果実味と優しい口当たりのワインを造りたいというコンセプトも性格そのもの。
少し脱線するかもしれないが一度ペドロの実家に寄らせてもらったが驚いた。なんとも素敵な豪邸に住んでいて、プール付きの庭に広々としたダイニングや数々の部屋。
ペドロには兄弟と妹がいるがそれぞれの個室には各自のトイレと洗面所がついている。お金持ちは家族内のトイレ争奪戦とは無縁なのだなあと思いながらしばし散策。
アイロンがけ専用の部屋でお手伝いさんがシャツを畳んでいるのを見かけ家の中で迷いそうになりながらうろうろしているとダイニングの大きくて立派なソファにうずもれるようにお父さんがTVを見ていた。このお父さん(二代目)が大黒柱で会社を大きくした人だ。
「素敵なお宅ですね」と挨拶すると、「こんな家を建てたけど忙しくてゆっくりくつろいでる時間なんかないよ」と皮肉にも苦笑い。ちなみにサッカー選手のイニエスタの父親とも地域も近いので親交があるそう。
醸造所を見学すると土着品種「ボバル」100%の新商品を試飲。
著名なフランス・ボジョレー地方の自然派ワインを想起させたため、同じような醸造にしてみたら面白いかも、と提案してみたところペドロも「面白い、やってみよう!」ということで300本を日本限定ということで試作してもらった。
これがまたピュアできれいな果実味がストレートに口の中を伝わり美味しく、この品種を表現するまた面白い一面かもしれないと自画自賛。2019年試作が好評だったため2021年にリピートしてもらった。
前回よりも開けたてからすでに完成していて凝縮感もあり素直に美味しい。タンニンがソフトでどぎつくなく、和食とも相性が良く親しみやすい味わい。
彼自身も納得のいく仕上がりになったため今後プロジェクトとしてお披露目するかもしれないという。
「その時は発案者で私の名前をラベルのどこかにいれといてね」と冗談めかして言っておいた。すぐアイディアを実現してくれる情熱的な若き生産者に今後も注目だ。
この生産者について詳しく知る
ピュアでフレッシュな新商品のオーガニックワイン
1973年設立の家族経営のワイナリー。カスティーリャ・ラ・マンチャ州アルバセーテのフーカル川とカブリエル川に挟まれた樹齢の古い畑(80年を超えるものも)から、品質もさることながら環境へも配慮し、オーガニック(有機農法)でワインを造っています。ユニークなラベルの魚はワインの特徴を最も表現している2つの川を表し、魚に生えている根はその地の個性と土地に“優しい”ワイン造りをイメージし、飛んでいる人はユニークでオリジナリティあるワインを消費者に届ける夢をモチーフにしています。